19世紀中頃、イギリス植民地時代のジャマイカには、インドから多くの契約労働者が移住しました。
彼らはスパイスと調理技術を持ち込み、現地の食文化と融合して独自のカレー文化が誕生します。
当初はインド系家庭料理として作られていましたが、次第にジャマイカ全土へ広がり、いまでは「ジャーク」と並ぶ国民的料理となりました。
インドのスパイス × ジャマイカのハーブ
―― それが“カリビアンカレー”の始まりです。
ジャマイカのカレーは、まずスパイスでマリネすることから始まります。
鶏肉や山羊肉、魚などのメイン食材を、ターメリック比率の高いカレー粉でしっかりと下味をつけます。
この黄金色のスパイスブレンドが、ジャマイカカレー特有の鮮やかな色と香りのベースになります。
さらに、タイム・オールスパイス・スコッチボネット。この三つの香りが、他のどの国のカレーにもない“ジャマイカらしい深み”を生み出します。
タイムの爽やかさ、オールスパイスの甘くスモーキーな香り、そしてスコッチボネットのフルーティーな辛味――
これらが重なり合って、南国の風を感じる独特の味わいが生まれるのです。
日本人がジャマイカカレーにはまる理由
日本では、カレーは「国民食」と言われるほど愛されています。それでいて、インドカレー・タイカレー・スリランカカレー・スープカレー・スパイスカレーetc. 時代ごとに、さまざまなスタイルのカレーがブームを起こしてきました。
そんな中で、ジャマイカカレーには日本人の味覚に驚くほど寄り添う要素があります。
それは、青ネギ・生姜・ニンニク。
この3つの香味野菜は、日本人が“やみつきになる食材トップ3”と言っても過言ではありません。(もう1つの国民食ラーメンでも欠かせません。)
実はジャマイカでも、これらの香味野菜は欠かせない存在。だからこそ、スパイスの奥に“どこか懐かしい旨味”が感じられるのです。
カレーに青ネギを使うなんて、日本のカレーより日本っぽい。
そう感じるほど、ジャマイカカレーは日本人の味覚に自然に溶け込む――
それが、思わず“やみつきになる理由”なのです。
ジャマイカでは、「チキンカレー」「ゴートカレー」ではなく“カリーチキン”、“カリーゴート”と呼ばれます。
これは英語で “Curried Chicken”=カレー味のチキン の意。
つまり、主役はチキンで、カレーは味つけのスタイルを指しています。
日本ではカレーそのものが主役で、そこに具材が入るというイメージですが、ジャマイカでは“食材の旨味をスパイスで引き立てる料理”。
それが、ジャマイカカレーなのです。
カレー粉でマリネし、炒め、最小限の水で煮込む。
ルウを使わず、香りで食べる――
それが、ジャマイカスタイルの香りでメイン食材を楽しむカレー なのです。
